ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
「やっぱり皆さんお医者様ですか?」

「いえ? 兄は血を見るのがイヤで起業して医療系の商社みたいなことをしているし、弟は一応医学部にいますけど」

 その情報だけでも、兄弟揃って優秀なのがわかる。

「おかあさまは? お医者様ですか?」
「いえ、母は薬剤師です。ドラッグストアーで働いていますよ」

「ドラッグストアーって、そこらのドラッグストアー、ですか?」
「そこらのがどこらのかわかりませんけど、雪村さんのマンションの近くにもあるドラッグストアーですよ? 今度紹介しますね」

 どういうことなんだろう。
 まさか九条家の奥様が普通に接客しているわけではないだろうし、そのドラッグストアーは九条家が経営しているとか?

 混乱しているうちに、車はいつの間にか都会のビル群を抜け、窓の外には緑の山並みが広がっている。

 フロントガラスの向こうを見つめた私の目に、ふと、大きな案内標識が飛び込んできた。

 箱根――。

「もしかして、箱根ですか?」

「正解」

 九条先生は前を向いたまま、口の端だけで笑った。
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