ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
「はい。すごく働きやすくて」

「それはよかった」

 メインの芦ノ湖産ワカサギと夏野菜のフライは、衣がサクサクと香ばしく、特製のタルタルソースとの相性も絶妙だった。地元の名物だと教えてもらったニジマスのソテーも、バターの風味がふんわりと鼻を抜けていく。

「お料理もおいしいし、今日は最高です」

「雪村さんに喜んでもらえると、連れてきた甲斐がありますね」

 先生はうれしそうに目を細めた。

 食事が終わると、さりげなく伝票を手に取った先生に思わず声をかけた。

「あの、私も払います」
「いいですよ」

「でも……」
「今日は俺が誘ったんですから」

 顔はにこにこしているのに、有無を言わさない口調で、私が財布を出す間もなかった。

 本当ならガソリン代だって出したいくらいなのに、彼はきっと受け取らないだろう。確かに誘ってきたのは彼だけれど、深刻な相談事がある様子もない。

 こんなふうにただ楽しんでしまっていいのか。戸惑いつつ、駐車場に降りた途端、秋の冷たい風とともに硫黄の匂いが鼻をついた。
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