ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 切り妻屋根の平屋建て、
 外壁は落ち着いたダークブラウンの木材で、周囲の木々に溶け込むように建っている。手入れの行き届いた石畳のアプローチの両脇には、夕暮れの光に照らされていっそう深く色づいた木々が並んでいた。派手さはないけれど、品があって居心地のよさそうな佇まいだ。

「どうぞ」

 重厚な玄関ドアを開けると、ふわりと心地よい木の香りに包まれた。リビングの大きな窓からは夕闇に溶けていく山の稜線が一望できる。生活感は薄いのに心を和ませる温もりが漂っていて、磨き抜かれた調度品の光沢が、この場所が大切に守られてきた歴史を物語っていた。

 少し小ぶりな旅館に宿泊すると思ってくださいと九条先生が言う通り、部屋はいくつかあって、そのうちのひとつに案内された。そこでようやくホッとする……。

「素敵なところですね」

「気に入ってもらえてよかった。温泉があるんですよ。先に入りますか?」

「えっ……と、でも、着替えが」

 そう言ったものの、そうじゃなくて、でも、温泉は気になるしと頭の中は混乱してぐちゃぐちゃだ。

「浴衣かありますよ。洗濯機使ってください」

「……はい」

 もうこうなったら温泉に浸かって落ち着くしかない。
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