ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
「そうだね、お腹はいっぱいだから、ミックスナッツかな」

 ふいに露子が「あ、そうそう」と何かを思い出したように顎を上げた。

「先週末、偶然ひなちゃんに会ったのよ」

 ひなちゃんは私や露子と同じ看護学校の後輩だ。卒業後私たちの後を追うように大学病院に就職したが、今は別の病院にいる。親しさは変わらず今でもメッセージのやりとりは続けていた。

「会いたいなー元気そうだった?」

「うん。今の病院とっても気に入ってるみたいよ」

 それから私たちはとりとめなく話した。職場の愚痴、最近見たドラマ、後輩の失恋話など。気持ちが落ち着いてくると、かえって残酷な現実がクリアに見えてきた。

 私は誠一郎さんの両親がどんな人か知らない。彼は自分の家が成城にあること以外、まったく話さなかった。実家も開業医らしいとか資産家らしいとか噂を耳にしただけで、彼の口から確かめたわけではない。
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