ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 とにかくわがままだった。正直あの頃の売店のお弁当は美味しくなかったけれど、ほかの人が食べている目の前で〝不味い〟はない。

「コーヒーとかも、ただの黒くて苦いだけのお湯だって」

 思い出すまま口にしてみる。

「うわー、雪村さんは相変わらず厳しいなあ」

 あははと露子が笑う。

 あっ、私ったら言い過ぎたようだ。

「九条先生にそんなこと言うのは、深結くらいだよ。みんな、さすが九条先生、口が肥えてるわーってキャッキャしてたのに」

「だって本当に文句しか言わなかったんだもの」

 御曹司のイケメン医師というだけで、皆優しすぎるのだと当時の私は思っていた。

 それにしても、私はいったいなにを言っているんだろう。普段ならこんなふうに突っかかったりしないのに、失恋のやけ酒のせいで、言いたい放題になってしまっている。

「あはは、確かに僕、最低でしたね」

 九条先生は気分を害するふうでもなく、眉を下げて困ったように笑った。
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