ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
「あの頃は本当にすみません。今思うと、ただの我が儘でした。雪村さんみたいにハッキリ言ってくれる人がいて、本当に良かったって思ってます」

「え……」

 素直に頭を掻く彼に、私はすっかり毒気を抜かれてしまった。かつての傲慢な態度からは想像もつかないその低姿勢に戸惑いつつも、うれしくなる。

「今の素直な九条先生、とってもいいですよー」

 言いながら頭の奥に押しやられた理性が、お前はいったい何様なんだと呆れる。彼は優秀な――。

「そういえば先生、何科を選んだんですか?」

「脳神経外科です」

 そこで露子が「おー」と声を上げた。

「さっすがー」

 うっかり御曹司と続けそうになりなんとか呑み込んだ。恐るべし酔っ払いである。

 もし九条先生が嫌そうな顔の一つでもしてくれたら、いくら酔っていても反省できただろうに、彼は「まだまだ修行中ですから」などと相変わらずにこにこしている。

 そんな他愛のない思い出話に、気づけばずいぶん時間が経っていた。

「もうこんな時間」
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