ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
「九条先生、本当はかわいい人だったんですねー」

「それって、褒めてます?」

「もちろん。男も女もかわいいは正義ですから」

 言ったそばから、ふと思った。私はどうだろう。かわいいだなんて多分一度も言われたことはない。褒め言葉といえば、しっかりしているねとか、真面目だねとか。容姿についても綺麗とは言われてもかわいいとは言われない。

 そもそも、九条先生に注意してしまうほど、かわいげのない女なのだ。

「雪村さんもかわいいですよ」

 ふと振り向くと、隣を歩く九条先生がにこにこと私を見ていた。

「嘘だ。もうー、九条先生ったらお世辞まで言うようになったんですか?」

「嘘じゃないですって。本当にかわいいですよ? 雪村さんは」

「わかりました。嘘でもうれしいですー。ありがとございますぅー」

 あははと笑い合って入った店は、大通りからほんの少し路地にある小さなバーだった。
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