ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
「考えたところで、忘れる以外ないですからね」

 そう言って、九条先生は瞼を伏せる。

 先生?

 ふと思った。友だちの話だっていうけれど、もしかして九条先生の話なの?

「かっこ悪いでしょ?」
「えっ? なにがですか?」
「その友だち」

 九条先生はちょっと寂しそうに苦笑する。その表情――きっとそうだ。友だちの話なんかじゃなく彼自身の話に違いない。

「全然」と、思い切り首を横に振った。
「そんなことないです。そんなふうに自分を卑しめてはダメよ」

 かっこ悪いとか惨めだとか、それは違う。捨てられたというレッテルで自分を傷つけてはいけない。それは自分にも言えるけれど。

 九条先生は「そうですね」と、目を細めた。

「結婚となると、女性のほうが現実的なのかなと思うんですが、どうですか?」

 不意に問いかけられて、ハッと息を呑んだ私はうまくごまかせずに視線を落とした。

「私は、むしろ男性はそうなのかな、と思っていました。背負うものがあるでしょうし」
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