ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
「だけど、彼女だって人を見る目がなかったというか。四年のうちには何かしら気づきがあったはずなのに見過ごした責任もあると――」
「そんなわけあるか」

 かぶせるように言った先生は、身を乗り出すようにして上半身を私に向ける。

「雪村さん」
 ふいに、低く落ち着いた声で名前を呼ばれた。

「はい?」

 怒りに満ちていたはずの先生の表情が、やわらかくなっている。口元には微笑みが浮かんでいて肩から力が抜けているように見える。

 それでも目だけは違った。私を射抜くその双眸は、かつて、手術室で見せたあの鋭く冷徹な外科医のそれ――いや、それとは違うむしろ真逆の、熱と執着を孕んだような……。

 え? な、なに?

「その『お友達』って、あなたのことでしょう」

 心臓がドクリと跳ねた。
「え……? ちがっ、私は――」

「違わない」

 遮る声には、もう先ほどまでの人懐っこい年下の面影はどこにもなかった。彼は手にしたグラスをローテーブルに置くと、ソファーのコーナーを滑るようにして、一気に私との距離を詰めてくる。
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