ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
驚く間もなく、私の逃げ道を塞ぐようにL字の背もたれに長い腕が回された。
「だから言ったのに――あの男は信用しない方がいいって」
あっ……あの微かな記憶は、あれは九条先生が言った言葉だったのか。
至近距離で見下ろす彼の瞳が獰猛に光る。Tシャツの隙間から覗く鎖骨や、男らしい肩の厚みが、嫌というほど目の前に迫ってきて思わず顔を背けた。
近い。あまりに近すぎる。
覆い被さる彼から、熱をともなった汗のような男性的な香りがしてドキドキと心臓が暴れる。
「あ、あの?」
ようやく絞りだした声は、自分でも悲しくなるくらいに弱々しい。押し返したいのに、あまりの急展開とさっきまでの彼とは違う圧倒的な気配に身体がすくむ。完全に腰が抜けたようになってしまい、指先一つ動かせなかった。
「人の気持ちも知らないで、他の男のためにそんな傷ついた顔、しないでください」
苦しそうに絞り出すような声だ。まるで、嫉妬と劣情に呻くみたいに。
「く、九条、先生……?」
「先生はなしで。――凌久って呼んで」
「だから言ったのに――あの男は信用しない方がいいって」
あっ……あの微かな記憶は、あれは九条先生が言った言葉だったのか。
至近距離で見下ろす彼の瞳が獰猛に光る。Tシャツの隙間から覗く鎖骨や、男らしい肩の厚みが、嫌というほど目の前に迫ってきて思わず顔を背けた。
近い。あまりに近すぎる。
覆い被さる彼から、熱をともなった汗のような男性的な香りがしてドキドキと心臓が暴れる。
「あ、あの?」
ようやく絞りだした声は、自分でも悲しくなるくらいに弱々しい。押し返したいのに、あまりの急展開とさっきまでの彼とは違う圧倒的な気配に身体がすくむ。完全に腰が抜けたようになってしまい、指先一つ動かせなかった。
「人の気持ちも知らないで、他の男のためにそんな傷ついた顔、しないでください」
苦しそうに絞り出すような声だ。まるで、嫉妬と劣情に呻くみたいに。
「く、九条、先生……?」
「先生はなしで。――凌久って呼んで」