ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 何を言ってるの、この人は。

「ちょ、ちょっとあの、んっ……」

 突然の変貌に驚いて完全に固まっている隙を、彼は逃さなかった。強引に私の顎を、長く器用な指先で掬い上げる。

 断らせない、絶対に逃がさない。そんな必死な意思が顎を固定する指の強い力から直に伝わってきて、彼の放つ圧倒的な独占欲と、それを上回る熱い何かに身体がすくむ。

「好きだ」

「え――?」
 う、嘘でしょーー……

 私の戸惑いの悲鳴は、あげる暇すら与えられず、すぐさま彼の熱い口の中に消えていく。

 穏やかでかわいい人になったんじゃないの? どうしちゃったの?

 それは、バーでかいがいしいほどに優しい九条先生からは想像もつかないほど、強引で、酷く熱い口づけだった。

 失恋のショックと驚愕のあまり目を見開いたままの私をあざ笑うかのように、彼の唇は一切の隙を与えない。じっくりと、それでいて飢えた猛獣のように深く、私の唇を、舌を、貪っていく。

「ん……っ……は、あ……っ」

 容赦なく呼吸を奪われ、酸欠で視界がちかちかと弾ける。
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