ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
心臓が止まるほど驚いた私は、おにぎりのラップをはがしかけていた手を止めた。もしかすると息も止まったと思う。
「相手、大きな病院を経営しているお家のお嬢さんで、ご本人も眼科医なんだってよ」
「あら、やっぱりああいうお家の先生はそれなりのところに落ち着くのね」
以前噂で耳にしたあのお見合いの女性らしい。どうやら相手の眼科医はまだ医師になったばかりで若くて美人なのだとか、密やかな噂話は続く。
その横でなんとか呼吸を取り戻した私は、なんでもない顔でラップをはがし、おにぎりを口に運ぶ。梅干しのおにぎりはいつになく塩辛くて、咳き込んだ私はその場を離れて洗面所へ駆け込んだ。
そんなに早く……。
覚悟はしていたはずなのに、現実は想像よりも残酷でずたずたに心を引き裂いた――。
それからは廊下で遠目に白衣の背中を見かけるだけで足が竦み、ナースステーションで同僚が「白石先生が」と開くたびに、心臓が締め付けられるようだった。
「相手、大きな病院を経営しているお家のお嬢さんで、ご本人も眼科医なんだってよ」
「あら、やっぱりああいうお家の先生はそれなりのところに落ち着くのね」
以前噂で耳にしたあのお見合いの女性らしい。どうやら相手の眼科医はまだ医師になったばかりで若くて美人なのだとか、密やかな噂話は続く。
その横でなんとか呼吸を取り戻した私は、なんでもない顔でラップをはがし、おにぎりを口に運ぶ。梅干しのおにぎりはいつになく塩辛くて、咳き込んだ私はその場を離れて洗面所へ駆け込んだ。
そんなに早く……。
覚悟はしていたはずなのに、現実は想像よりも残酷でずたずたに心を引き裂いた――。
それからは廊下で遠目に白衣の背中を見かけるだけで足が竦み、ナースステーションで同僚が「白石先生が」と開くたびに、心臓が締め付けられるようだった。