ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 誠一郎さん、もとい白石先生と二人きりで顔を合わせたのは、さらにその一週間後。カルテの確認で内科フロアに立ち寄ったとき、エレベーターのドアが開いてその正面に彼がいた。

 一瞬、時間が止まった気がした。心臓は痛み、呼吸は一瞬止まったと思う。けれども彼は私を認めるとわずかに目を細めただけだった。

「どうぞ?」

 廊下に出た彼は、私が乗り込むのを待つように、ドアに手をかけた。

「すみません……ありがとうございます」

 なにごともなかったように離れていく彼の足音を聞きながら、ドアが閉まると私は上を向いて、ゆっくりと息を吐き出した。

 なんだか、付き合っていたのが嘘みたい。

 私にとって積み重ねてきた年月の重さは、三週間やそこらで消えてくれるほど軽くはないのに、彼はすでに何とも思っていないように見えた。
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