ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 彼の婚約を知ってから食事が喉を通らない。おにぎりを無理やりお茶で流し込んでいるような状態だ。とりあえずサプリメントは摂っているが、健康的とはいえない。

 私が小さく力なく笑うと、露子はそっと私の肩に手を置いてくれた。

「すぐに割り切れるわけがないよ。――今夜の残りの記録、私が少し手伝うから、深結はココアを飲んで、ちょっと休んで」

「ありがとう」

 私が書いたメモを見ながら、露子は手際よく電子カルテを入力していく。その横で私は露子がくれたココアを口にした。

 コクのある甘さがじんわりと喉の奥に染み渡っていく。
 痛みに静かに寄り添ってくれる親友の気遣いがありがたくて、張り詰めていた体から少しずつ強張りが解けていくようだった。

「本当にありがとうね。露子がいてくれてよかった」

「ふふ、なに言ってるの。困ったときはお互い様だよ」
< 64 / 118 >

この作品をシェア

pagetop