ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
「そんな人と結婚しても幸せにはなれないし、かえってよかったんだよ」

 まだ現実を受け止めきれない私は、曖昧に微笑んだ。

 露子は同じ病棟の同僚で、誠一郎さんとの交際を打ち明けていた数少ない一人だ。彼がお見合いする噂を知っていたのでこうなると予想していたらしい。【振られちゃった】とメッセージを送ると、仕事終わりにすぐに飛んできてくれた。

「大丈夫だよ、深結。私も失恋したときはこの世の終わりだっていうくらい落ち込んだけど、今はほらこの通り。新しい恋をして元気溌剌よ」

 彼女の明るい笑顔につられて、今度は素直に笑う。

「そうだね。がんばるよ」

 飲んでいた私のグレープフルーツサワーも空になり、「とりあえず場所変えようか」と露子が立ち上がる。

「ここ、ちょっと賑やかすぎ」

 小声でそう言う彼女に苦笑して私も後に続く。
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