ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
そして――九条先生がこの病院の御曹司だという事実を飲み込めないまま、初日の仕事が始まった。
病棟の雰囲気はそれこそ桜の風が吹くように爽やかだった。師長は物腰が柔らかく、先輩看護師たちも親切で、新入りの私に丁寧に声をかけてくれる。看護師の仕事も大きくは変わらないので戸惑いもなかった。
仕事が始まってしまえば、目の前の患者に集中するだけだ。なんにせよ契約してしまった以上ここで働くしかないのだと腹を決めて、仕事に打ち込んだ。
お昼になると、ひなちゃんが私のいる病棟まで迎えに来てくれた。
「深結さん、お疲れさまです!」
ひなちゃんは砂糖菓子のようなかわいい女性だ。いつも微笑んでいるような目と口元をしていて丸顔で、明るめのブラウンの髪をふんわりとうなしでまとめている。見た目と性格も一致していて、彼女といるとそれだけで笑みが浮かぶ。
「どうですか、いくらか慣れましたか?」
「今はとにかく無我夢中って感じかな」