ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 そこへ、九条先生が入ってきた。

「調子はどうですか」

「まあ……」と、患者は口ごもる。

 九条先生はベッドの傍らに腰を下ろすと、柔らかい表情で患者の顔をじっと見た。

「昨夜はどうですか。よく眠れましたか?」

「いや……あまり」

「そうですか」

 先生はそう言いながら患者の手首をそっと取り、脈を確かめた。それからおもむろに聴診器を耳にかけ、胸に当てる。

「気になっていることがあれば何でも聞いてくださいね。手術のことでも、そうじゃないことでも」

 しばらく黙っていた患者は九条先生の包み込むような表情と声に促されるように、やがて、ぽつりと言った。

「孫の運動会が、来月あるんですよ」

「おお、それは楽しみですね。お孫さんは何歳ですか?」

 九条先生の明るい声につられたように、患者も笑顔になる。

「七つです。初めて徒競走に出るって張り切っとって」

「それは絶対見に行かないと。がんばりましょうね」

「はい。――先生、よろしくお願いします」

「もちろん、全力を尽くします」

 傍らでやり取りを聞きながら、胸が熱くなった。
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