ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 ――ちょっと、先生、完璧じゃないの。

 以前の彼は患者の前では、にこりともしなかったし、今のように患者が心を開けるような雰囲気をまとっていなかった。

 人はこんなにも変われるのか。

 いや違う……。
 表に出さなかっただけで、もともとこういう人だったのかもしれない。私が思わず怒ってしまったあの時は、彼はまだ研修医でそこまでの余裕がなかっただけだったのだ。

 自分だって看護師になりたての頃は『患者さんと向き合ってる?』と、よく先輩に注意された。

 そしてふと、思い出した。

『まったく。御曹司だかなんだか知らないが。患者の気持ちもわかろうとしないし高慢で最悪なやつだ』
 白石先生がそんなことを言っていて、それが九条先生という人だと私の中に刷り込まれていた……。

 回診が終わり、悶々としながら九条先生と一緒に廊下に出て、扉を閉めると私は先生に向き直った。

「先生……私、本当に先生を誤解していました。すみません」

「ええ? どうしたんですか? いきなり」

 歩き始めた先生の後についていき「本当にすみませんでした。あの時は失礼な事を言って」と重ねて謝る。
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