ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
「もしかして研修医だったときのことなら、とっくの昔に時効ですよ。言ったでしょう? むしろ勉強になったって。言葉にしなければ伝わらないし、僕は職員の待遇をわかっていなかった。――感謝しているんですよ?」

 途中すれ違う看護師や医師に軽く頭を下げながら廊下を進む。

「でも」

 九条先生が立ち止まったのはエレベーター手前の自動販売機の前だった。ポケットから取り出したネームプレートをかざし、彼はブラックコーヒーを選ぶと「どれにします?」と聞いてきた。

 戸惑っていると「さあ」と急かされて、カフェラテを選ぶ。

「雪村さんには、いろいろ力になってほしいと思っています。皆さんどうしても俺には遠慮があるのか、いい面しか話してくれなかったりするのでね」
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