ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
 ああ……。それは少しわかる気がした。

 彼は慕われるようになったけれど、それとこれとはまた違う。彼によく思われたいがために我慢をするとか、彼のシフトに合わせてこようとする殺到する不自然なシフト希望とか。彼の努力だけではどうにもならない歪みがある。

 それくらいならいいが、患者のケアよりも彼への対応を優先してしまう困った看護師がいるとひなちゃんから聞いていた。

 彼なりに真剣なのだと考え込む。

「そんなことよりも、責任とってほしいな」

 ガラガラと音を立てて落ちてきたカフェラテを取り出した彼は、私にそれを差し出してにっこりと微笑む。

「責任……?」

 心当たりはないが、私も知らず知らずのうちに、なにかしてしまっているのだろうかとハッとした。

「あの夜が忘れられない」
 はっ?

「ここ疼いて仕方がないんだ」
 九条先生は自身の胸を指差す。

「コイ、ワズライ」

 言っている意味が理解できて、一気に熱が込み上げた。

「な、なにを言ってるんですか?」
 ギョッとして一歩後退する私に、彼は一歩近づく。

「週末、空けておいてくださいね、雪村さん」
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