きみが待つ空へ ~敏腕パイロットは命をかけて愛を守る~
6 迫りくる危機
添乗を担当したのは、イラードの特産品であるじゅうたんの視察旅行だ。
参加者はじゅうたんを扱う商社や百貨店のバイヤーを中心とした10名。
隣国イラルとの小規模な紛争が続いているイラードでは、観光目的で訪れる旅行者は少ない。
けれども、私たちが訪れる地域では比較的平穏な日常が営まれ、危険はないはずだった。
私にとって二度目のイラードの添乗も、何事もなく終えられる……と思っていたのに。
その日のイラードは、妙に静かな夜だった。
ホテルの部屋で翌日の行程表の確認を終えると、私はシャルトル・ブルーのネックレスをブラウスの襟ぐりからそっと引き出した。
颯さんにもらったあの日から、肌身離さず身に着けている大切なお守りだ。
仕事中は人目につかないようにブラウスの下に隠している。
今ごろ颯さんは、トルコにいるはずだ。
どうしているのかな……。
会いたい。
そう思っていたとき、本社から電話が入った。
「え……? どういうことですか? 48時間後から、全部の飛行機が攻撃対象になるって……」
何を言われているのか、すぐには理解できなかった。
連絡によれば、隣国のイラルが、48時間後以降、イラード上空を飛ぶいかなる航空機も――民間機であろうとも――攻撃対象にすると警告を発表したとのことだった。
スマホを持つ手が震える。
在イラード日本大使館から直接連絡があれば、その指示にしたがってほしいと告げられ、通話は切れた。
48時間以内にイラードを出なければならない。
猶予の時間が過ぎる前にこの国を脱出できなければ、戦地になるかもしれない場所に取り残されることになる。
さらに、たとえ飛行機に搭乗できたとしても、48時間以内にイラードの領空を抜け出なければ、撃ち落とされる可能性がある。
これは現実なのだろうか。
信じたくはなかった。
でも私は、お客様を全員無事に日本へ連れ帰らなければならない。
その責任の重さを思うと、膝から崩れてしまいそうだった。
参加者はじゅうたんを扱う商社や百貨店のバイヤーを中心とした10名。
隣国イラルとの小規模な紛争が続いているイラードでは、観光目的で訪れる旅行者は少ない。
けれども、私たちが訪れる地域では比較的平穏な日常が営まれ、危険はないはずだった。
私にとって二度目のイラードの添乗も、何事もなく終えられる……と思っていたのに。
その日のイラードは、妙に静かな夜だった。
ホテルの部屋で翌日の行程表の確認を終えると、私はシャルトル・ブルーのネックレスをブラウスの襟ぐりからそっと引き出した。
颯さんにもらったあの日から、肌身離さず身に着けている大切なお守りだ。
仕事中は人目につかないようにブラウスの下に隠している。
今ごろ颯さんは、トルコにいるはずだ。
どうしているのかな……。
会いたい。
そう思っていたとき、本社から電話が入った。
「え……? どういうことですか? 48時間後から、全部の飛行機が攻撃対象になるって……」
何を言われているのか、すぐには理解できなかった。
連絡によれば、隣国のイラルが、48時間後以降、イラード上空を飛ぶいかなる航空機も――民間機であろうとも――攻撃対象にすると警告を発表したとのことだった。
スマホを持つ手が震える。
在イラード日本大使館から直接連絡があれば、その指示にしたがってほしいと告げられ、通話は切れた。
48時間以内にイラードを出なければならない。
猶予の時間が過ぎる前にこの国を脱出できなければ、戦地になるかもしれない場所に取り残されることになる。
さらに、たとえ飛行機に搭乗できたとしても、48時間以内にイラードの領空を抜け出なければ、撃ち落とされる可能性がある。
これは現実なのだろうか。
信じたくはなかった。
でも私は、お客様を全員無事に日本へ連れ帰らなければならない。
その責任の重さを思うと、膝から崩れてしまいそうだった。