キスするくせに、彼氏じゃない。
今日は、並んで座れた。

 

座れないほうがよかったかもしれない。

目の前に窓もなく、隣にいることから気をそらしにくかった。

 

私は鞄を膝の上に置いた。

持ち手をそろえる。

一度ほどいて、またそろえる。

 

「白石」

 

肩が少し跳ねた。

 

「……何」

 

瀬川くんは、私の手元を見ていた。

それから、膝に置いた自分の手へ目を落とす。

 

「昨日」

 

息が止まりかけた。

 

彼も、それ以上すぐには続けなかった。

 

電車がカーブに入る。

吊り広告が、ゆっくり揺れた。
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