深海のカフェ冬銀河〜破滅ではなくマスターに堕ちてゆく〜
フラスコのコーヒーが、丸みを帯びた白いカップへ注がれる。

「お待たせしました。コーヒーとモンブランです」

テーブルに置かれたカップからは、白い湯気が音もなく立ち上っている。そこを漂うコーヒーの香りは、色香のように魅惑に満ちていた。

店内のランプの光がほんの少しだけ揺れて、更なる魅惑に満ちる。

コーヒーを飲む時は、いつも砂糖とミルクを入れていたから、ブラックコーヒーは、何年ぶりだろう。

私は、カップの取っ手に指をかけ、それを口にした。

「美味しい⋯」

コーヒーを飲んで、その言葉を発するなんで、自分で自分を疑ってしまうくらい。

勿論、苦味はあるけれど。その苦味を追いかけてくるように、ほんのりとした甘みと、華やかさが奥行きとなって広がってゆく。人生のように儚くはない、コーヒーの味。

感慨深く膨らんでゆく余韻。
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