いつか終わってしまう初恋に、わたしはあなたを巻き込んだ
 わたしがそう言うと、ラウルは押し黙った。

「それとも、わたしも床で眠ろうかしら」

 長身は天を仰いで、わしゃわしゃと前髪をかき上げる。手を離せば、ラウルは自分の毛布を取って戻ってきた。

「……分かりました」

 ラウルは、わたしが包まっている上掛けの上にさらに毛布を掛ける。
 それからブーツを脱いで、寝台の前に揃え直した。こんな時まで本当に、そつがない。

 意を決したように、ラウルは大きくため息を吐く。

「失礼、します」
「どうぞ」

 男の体重の分だけ、簡素な寝台は沈む。端から少しも動かない彼に、わたしは手を伸ばした。

「姫様っ」

 その胸に飛び込んで、ラウルにも上掛けと毛布を掛けるようにする。

「だって引っ付かないと、入れないでしょう」

 鎖骨に額をのせたら、ラウルが堪えるように呻いた。
「……っく」

「ラウル……?」
 見上げても、顔は見えない。闇の中に飲まれたようになるけれど、その息遣いは確かに感じられる。

 蹴出した爪先に膝頭が触れる。慌てて引っ込めようとしたら、背中に左手が回された。

「きゃっ」
「あなたという人は」

 ぴたりと体が密着して、わたし達の間の距離が消える。男の手に宥めるようにとんとん、と背を叩かれる。まるで子供の寝かしつけみたいだ。

 二人分の体温で布団の中はあたたまっていく。わずかに逸るような、ラウルの心臓の音がする。

 ああ、なんてこの人はあたたかいのだろう。石なんかとは比べ物にならない。
 わたしを抱き寄せる腕の力が少しだけ強くなる。

 意識が泥に沈んでいくようになる。
 頭がぼんやりとしていって、背中に回るラウルの腕のだけが命綱のように感じる。

 そっと額に吐息がかかって、それからあたたかな何かが下りてきた。

「おやすみなさい」

 触れたか触れないか、そんなかすかな口づけ。
 これは、一体何だろう。

 尋ねたいのに、もう瞼が動かない。それとも、兄なら眠る前に妹にキスすることも当然なのだろうか。確かに、母様はよくこんな風にしてくれた記憶はあるけれど。

 このまま二人で一つに溶けていければいい。
 揺蕩う水のようなまどろみの中で、そんなどうしようもないことばかりを考えた。
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