いつか終わってしまう初恋に、わたしはあなたを巻き込んだ
 池に飛び込んだ時、俺は姫様が巻いてくれたマフラーを失くしてしまった。きっと外れて池の底に沈んでしまったのだと思う。

 あれからずっと、夢を見る。冬になると、それはより鮮明になる。

 夢の中で、俺は走っている。
 何度繰り返しても、俺の手をすり抜けて、姫様は池に飛び込んでしまう。

 ある時は微笑んで、ある時は悲しそうに。

 俺の手は、いつも届かない。解けたマフラーと一緒に、姫様は消える。

 あの時は、姫様は俺に一体、なんと言ったのだろう。それは絶対に聞こえることはない。
 ただ、もし「来ないで」だったとしたら。俺はどうすればいいのだろう。

 眠れないのは、恐ろしいからだ。

 刺客も王妃も、何も怖くはない。ただ強くあればいいだけの話だ。そうすれば、この人を守ることができる。

 けれど俺は、あの人が自分を手放してしまうのが恐ろしい。

 眠っている間にあの人がいなくなるなんて、耐えられない。
 だから、俺は寝台では眠れない。

 俺の肩に丸い額が乗せられている。小さく華奢な体。強張ったようなそれから、やっと力が抜ける。姫様はやっと眠ったようだった。

 左手でその髪を撫でる。絡みつくように、それは俺の手に馴染む。

 池から抱き上げた姫様の体は、濡れて冷え切って、重かった。ぐったりとしたあの重みを、俺は忘れたことはない。

 起こしてしまわぬようにと気をつけて、ぎゅっと抱き寄せる。

 ああ、ちゃんとあたたかい。彼女はここで、ちゃんと生きている。

 たとえ何がこの人を連れ去ろうとしても。
 俺の腕の中にいるこの今、姫様は俺のもの。俺だけのものだ。

 あなたが明日も目覚めてくれますようにと願って、俺は額に口づける。
 他にはもう、何も望まない。
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