いつか終わってしまう初恋に、わたしはあなたを巻き込んだ
 ああ、また、あなたはそんなふうに言う。
 俺がどれだけ、あなたを想っているかなんて、知らないで。

「これで、もう追われることもないわ。あなただって、」

 遮る自分の声は、ひどく大きく響いた。

「いいわけないだろう!」

 何よりも、大切にしてきたつもりだった。命だって、惜しくはなかった。
 それでも、この手はまた届かない。

 “フェリシエンヌ殿下”は死んでしまった。
 このまま俺の前からも、消えてしまう気なのか。

「きゃっ」

 華奢な肩を掴んで押し倒す。こんなことならもっと、早くこうしておけばよかった。
 横たえれば、金髪はふわりと跳ねるようになる。

「もういい。もう、俺のものにしてやる」

 乗りかかれば、ぎしりと寝台が軋む。

「そうね」

 こんな状況だというのに、その目は揺らぎもしなかった。乾いた声が言う。

「いいわ。それであなたの気が済むのなら。この体を、好きに使って」

 はだけた襟元に、彼女は手をかける。細い指はしゅるりとリボンを解いていって、胸元が、薄い腹があらわになる。

「ずっと返さなきゃって思ってたの。わたしが、あなたを縛り付けたから」

「違う」
 きゅっと、細い手首を掴んだ。

 俺は、この人に騎士としての忠誠を誓った。けれど。

「俺は、もっと」

「じゃあ、どうすればいいの」

 握りしめた俺の手を、彼女は握ってきた。自分の手の上に、折れてしまいそうなほどに細い手が重なる。大した力でもないのに、振りほどけなかった。

「わたしにはもう、何もないわ。王女でもなんでもないわたしは、あなたに一体何をあげられる?」
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