いつか終わってしまう初恋に、わたしはあなたを巻き込んだ
 娘が、軽い声で言った。妙に清々しい顔で少女は笑う。

「意外ともう生まれ変わって、今はどこかで楽しく過ごしているのかもしれないわ」

 さらりと、風が金色の髪を攫っていく。
 その度に、甘い香りがする。この店で扱うどの果物よりも、かぐわしい香り。

 陽の光に照らされて、彼女の髪はきらきらと輝いた。

「にしても、きれいな髪だな」

 そっと髪を押さえて、少女がはにかむ。青い目を細めて、少し遠くを見るようにする。

「ええ。兄様がいつも梳いてくれるから」

 その様があまりにも美しかったから、青年はしばし見惚れた。
 危ない危ない。慌てて、りんごを入れた袋を渡す。

「では、またね。ありがとう」

 代金を受け取る時に微かに指が触れ合うのさえ、小さなときめきを連れてくる。

「うん、また。リシェ」

 リシェはひらりと手を振って、軽やかに歩いていった。

 そういえば、彼女の兄は目と同じ黒い髪をしているらしい。妹は、金髪碧眼だというのに。

「本当に兄妹なのかな」

 青年が呟くと、奥で果物の整理をしていた母がすぐそこにいた。

 なんだか満足げな目で、リシェの背中を見送ったと思えば、果物がいっぱいに詰まった荷箱を置いていく。

「ほら、ぼさっとしてないですぐ並べな」
「ういー」

 店先に果物を並べながら見れば、遠くにリシェの金髪が見えた。

 迎えに来たのだろう。例の兄らしき黒髪の長身の男が隣に立っている。連れ立って歩く様は仲睦まじい限りだ。

「でも、似てないよなぁ」

 母がやれやれと、呆れたようにため息を吐くのが聞こえた。

「あんた、野暮なこと言ってんじゃないよ」
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