いつか終わってしまう初恋に、わたしはあなたを巻き込んだ

七歳 Side-R

 大広間の真ん中に、少女が座っている。
 ふっくらとした丸い頬。太陽の光を撚り合わせたような金色の髪。

 齢たった七つ。それでも、彼女はこの場の全ての中心だ。
 フェリシエンヌ殿下は、花のように華やかに笑っていた。

 宝石、ぬいぐるみ、ドレス。
 望めばなんだって、手に入る。

 けれど、どうしてだろう。
 時々ふっと、さざ波のようにその目が揺れる。まるで、自分がここにいていいのか思い悩むみたいに。

 フェリシエンヌ殿下がこちらを向いた。
 見つけたとばかりに、青い瞳が輝く。

「ねえ。ラウル。あなたは一体、何をくれるの?」

 とっておきの宝物をねだるみたいに、彼女は言った。

「ぼくは……」

 自分の手を見る。見習いになったばかりのぼくの手はまだ小さくて、何の役にも立たないことは明らかだった。

「クリストフ様はこんなに大きな金剛石(ダイヤモンド)をくださったのよ。つまらないものだったら、許さないわ」

 金剛石も、王子の身分も、ぼくには何もない。
 たったひとつ、この身を除いては。

 だからそっと、彼女の手を取って膝を突く。

「フェリシエンヌ殿下」

 ぼくの手よりももっと小さくてか細い、姫君の手。それを押し戴いて額に当てる。

「ぼくは、ぼく自身をあなた様に捧げます。どんな時も殿下のおそばにいて、必ずお守りするとお誓い申し上げます」

 ゆっくりと顔を上げて、見つめ合った。

「そう」

 青い瞳がぱちぱちと瞬きをする。
 ぼくはその目の中に、星を見た。そしてそれに、魅入られた。

「ならばあなたは一生、わたしのものよ」

 少し舌足らずな声が告げたのは、永遠の約束。
 何も知らないお姫様の、無邪気な横暴。

 それでも、頭の先から爪先まで電流が走ったかのようだった。

 ただ一言、返事をするだけでいい。
 そうすれば、ぼくはこの人とずっと一緒にいられるのだ。

 それはとてつもなく甘美で、想像するだけで身の内が震えるようだった。
 あなたがいるのなら、もう、何もいらない。

 だからぼくはこう、答えた。

「喜んで」
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