いつか終わってしまう初恋に、わたしはあなたを巻き込んだ
「姫様」

 耳元で囁かれて、はっと我に返る。

「前方に、誰かいます」

 手綱を引く彼の腕が強張るのを感じる。おそらく誰か待ち伏せているのだろう。

 王妃は、わたしが王女だということは伏せて人相書きをばらまいた。そして、生死は問わずその者を捕え、証を持ってきたものに褒美を授けると言った。

 ゆえにやたらと目立つ金髪は皆の知るところとなり、この顔を狙うものが後を絶たない。

 こちらを取り囲むように人影が現れた。大方金に目が眩んだその辺りのごろつき達だろう。

 わたしは何度も殺されかけている。 

 ラウルが手綱を片手に持ち替える。そのまま右手で剣を抜いた。おそらく突っ切るつもりだろう。

「その女を置いて行けっ!」

 自分に向けられる殺気に慣れられるほど、わたしも図太くはない。そして、同じぐらい後ろの男が纏う空気が冷たいものに変わる。

「それはできない相談だな」

 ラウルは低い声でそう答えるだけだ。すると、彼らは示し合わせたようにこちらに飛びかかってきた。

「しっかり捕まっていてください。できるだけ、体を低くして」

 言われるがままにわたしはぎゅっと馬に抱き着くような姿勢になる。たまらず、目をつぶってしまった。

 剣と剣がぶつかる音がする。あとは、矢が空を切る音。
 人の気配が少しずつ減っていく。そうだ、この男は強い。

 不意に、頭の上でひゅんっと鋭い音がした。背中に重みがかかって、けれどそれはすぐに離れる。がくん、と馬が大きく揺れる。

「っく!」

 背中の向こうでラウルが喉で呻くような声を上げた。鼻先をかすめる血の匂い。これは、どういうことだろう。

「ラウル?」

 振り返ろうとしたら、鋭い声に止められた。「動くなっ!」

 最後に残っていた敵を斬り捨てて、ラウルは馬を駆る。わたしはそのまま身じろぎ一つできず、何が起こったのかは分からなかった。
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