傷心な私と幼なじみ御曹司の契約結婚~不眠治療のハズが、20年分の執着愛で甘やかされています~

3.俺だけ見ていればいい

「誰が見ても俺の妻だとわかるくらい大きなダイヤにしようか」
「冗談でも創くんが言うと怖いよ」
 手を引かれ、車に乗り込むと秘書の藤森が車を走らせる。
 赤信号で停車したとき、莉緒の視線は何気なく創の向こう側、車窓の外へと向いた。

 休日で賑わう表参道の大通り。
 歩道をベッタリと腕を組んで歩いていたのは、見間違えるはずもない翔太と玲奈だった。
 昨日、会社にいた時と同じ服の玲奈が、甘えた顔で翔太の腕に胸を押し当て、翔太は嬉しそうに腰を引き寄せている。
 
 昨日まで自分がいたはずの場所。
 ううん、翔太は私と手をつなぐこともなかった。
 裏切られたショックと虚無感が莉緒の胸を鋭くえぐる。
 ぎゅっと膝の上のスカートを握りしめた手が、かすかに震えた。

「……莉緒?」
 突然、莉緒の視界は真っ暗に。
 創の大きな手が莉緒の後頭部をやさしく包み込み、そのまま広い胸の中へと引き寄せられたと気づくには数秒かかった。
 鼻腔をくすぐる、創の上質なコロンの香り。

「創、くん……?」
「俺だけ見ていればいい」
 創の腕が力強く莉緒を抱きしめる。
 
「あんな奴、莉緒が涙を流す価値なんてない」
 創の手のひらから伝わる熱と、力強い鼓動。
 創の香水の香りに包まれると、不思議と胸の痛みが引いていく気がした。

「藤森。指輪は取りやめだ。家に戻れ」
「……よろしいのですか?」
「今度でいい」
 創の優しさに、莉緒の胸はキュッと締め付けられた。

 タワーマンションの地下駐車場に車が滑り込む。
 車を降りると、藤森が恭しく一礼した。

「お食事の手配はいかがいたしましょうか。今すぐシェフは難しいため、デリバリになりますが」
「創くん」
 創の胸から離れた莉緒は、ふと思い立って声を上げた。

「……私、何か作ろうか?」
 着替えも買ってもらったし、部屋も貸してもらってるし、少しでも役に立ちたい。
 
「莉緒の手料理?」
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