傷心な私と幼なじみ御曹司の契約結婚~不眠治療のハズが、20年分の執着愛で甘やかされています~
 まさか専用カウンターに持って行くだけで、部屋まで運んでもらえるなんて。
 綺麗に箱に入れられた食材たちの上には、店まで来なくてもネットで注文頂ければ宅配しますというチラシまで。
 重い買い物袋を抱えながら帰る庶民とは大違いだわ。
 

「おまたせ」
 広々とした最新式のキッチンで作ったのは、大根おろしが乗った和風ハンバーグと、具だくさんのみそ汁にサラダ。
 品種まで選択できる炊飯器で炊いたごはんは艶々で、おいしいことは間違いない。
 ダイニングテーブルに並べられた家庭料理を前に、創は静かに箸を取った。

「……いただきます」
 ハンバーグを一口食べた創の動きがピタリと止まる。

「どうかな……? 口に合わない?」
「美味すぎる。どんな店の料理より、莉緒の方が美味い」
 いやいや、さすがにそれは褒めすぎ。
 この艶々ごはんは本当においしいけれど、あとは普通だからね。
 
 でも創はきれいに完食してくれた。
 自分の作った料理をこんなに嬉しそうに食べてくれる人がいる。
 それだけで、翔太に裏切られて傷ついた心が癒やされていく気がした。

「ごちそうさま。洗い物は俺がやるよ」
「そんな! 私がやるから大丈夫だよ」
「いいから座ってろ。水仕事で手を荒らさせたくない」
 創は手際よく汚れを落とすと、食器を食洗機へ。
 食洗器に入らないフライパンは自分で洗い、片付けていく。

 優しいな、創くん。
 翔太は一度も洗ってくれたことなんてなかった。
 料理も残されるのは当然で、もったいないから次の日に自分のお弁当にしていたのに。
 
 片付けを終えた創は書類を手にし、ソファーでくつろぐ莉緒の隣に腰掛ける。

「これって……?」
「『結婚契約書』だ」
「け、契約書!?」
 驚きながら受け取り、条文に目を通す。
 第1条、第2条と難しい法的な文言が並んでいたが、第3条を見た瞬間、莉緒の目が飛び出しかけた。
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