傷心な私と幼なじみ御曹司の契約結婚~不眠治療のハズが、20年分の執着愛で甘やかされています~
 慌てて視線を落とすと、莉緒の腰には男性の太い腕がまわされ、逃げられないようにしっかりと抱き寄せられていた。
 さらに長い脚まで莉緒の脚に絡められている異常事態だ。
 目の前には、整いすぎた創の寝顔。
 長いまつ毛が頬に影を落とし、完全に無防備だ。
 
 嘘でしょ……!
 創くんの抱き枕になってる!
 刺激が強すぎる状況にパニックになった莉緒は、そっと身体を引き抜こうと身悶えた。

「……あと5分」
 低く掠れた声が耳元で響き、グッと力を含んだ腕が莉緒の身体をさらに創のもとへ引き寄せる。
 
「創くん、起きて。近すぎるよ」
「……もう少しだけ」
 逃げようと暴れる莉緒の腰をガッチリと腕で固定した創は、莉緒の首元に顔をうずめたまま満足そうに吐息を漏らす。
 結局、5分どころではない密着から解放されたのは、創に電話がかかって来た30分後のことだった。

「創くん、電話、電話!」
 画面を確認した創は、そのままスピーカーモードにして通話を繋ぐ。

『副社長。佐藤翔太氏が外出しました。奥様のお荷物を取りに行かれますか?』
「お、奥様!?」
「行くか、莉緒」
 今なら翔太がいない……?
 あのマンションには必死で買い集めたインテリアデザインの貴重な専門書もあるし、お気に入りの鞄や靴もある。
 
「行きたい!」
「だそうだ」
『かしこまりました。10分後にうかがいます』
 急いで身支度しようと思った莉緒は、今さら気づいた。
 ここにあるのは昨日着ていた汚れた服と、雨でぐちゃぐちゃになった靴、そして仕事の資料がパンパンに入った鞄だけ。
 着替えもメイク道具もないのだ。
 
「あの、創くん。私、着替えがなくて。この服、借りたままで……」
「心配いらない。もうすぐ届く」
 タイミングよくインターホンが鳴り、玄関に向かった創が手に持って戻ったのは大きなショップバッグだった。

「はい、莉緒」
「えっ……これ、芸能人がよく紹介しているブランドの……」
 ショップバッグについているロゴマークは、テレビでよく見る有名ブランドのもの。
 慌てて中身を広げると、綺麗すぎるワンピースと莉緒が好きなオレンジベースのコスメが一式揃えられていた。

「な、なんで私の好みを!?」
「莉緒に似合うものを揃えさせただけだ」
 昨晩ここに来た時には店は閉まっている時間。今だってまだ店は開いていないはずなのに。
 ハイブランドの服と、私のパーソナルカラーにピッタリのコスメを用意できる秘書って何!?
 というか、創くんが指示したの……!?

< 7 / 14 >

この作品をシェア

pagetop