新宿駅に掲示板
 翌日、激しい自己嫌悪に襲われながら、美幸は恐る恐る伝言板の前へと向かった。

 自分の書いたみっともない愚痴なんて、駅員に綺麗に消されているか、あるいは彼を怒らせてしまったに違いない。そう思っていた。

 しかし、黒板の隅に目を留めた瞬間、美幸は小さく息を呑んだ。

 彼女の消え入りそうな文字を包み込むように、そこには、さらに続きと思われる『詩』が書き足されていたのだ。

『背を向ける人は、そんな言葉をこぼすけど、もがいた傷の数だけ、君の明日は優しくなれる。足元の影が伸びる先には、きっと明るい光があるから』

 それは、明らかに彼女の弱音に対する、彼? からの静かで、力強い応援の歌だった。

 大勢の人が行き交う駅の喧騒の中で、美幸の目から、今度こそポロポロと涙がこぼれ落ちた。

 大都会、東京で、心に寄り添ってくれる人物が現れたこと、この文字の主だけは、自分の存在を、自分の傷を見つけてくれたことに、喜びを感じた。

 人生で初めて訪れた、紛れもない心のつながりだった。

 美幸はあたりを気にしながら、涙を手の甲で、急いで拭い去る。

 そして冷え切った指先で、美幸は再びチョークを握りしめた。彼の詩のあとに、今度は小さく、けれどまっすぐな文字を書き入れる。
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