私、いつの間に王子殿下の婚約者になったのでしょう? そして、悪役令嬢って何ですか?


「熱心に辞書を読み出したと思えば、何を調べているのですか? レティシアお嬢様」

 午後のアフタヌーンティーを楽しみながら、分厚い辞書を熱心に読んでいたレティシアが突然口にした言葉に、セバスティアンは訝しげに尋ねる。

「悪役の定義についてよ」

「はあ。悪役ですか?」

 それはわざわざ辞書で調べることなのかと、内心首を傾げるセバスティアンである。

「昨日、アーパー王子が留学から帰ってきたでしょう?」

「アーティ王子ですね」

 アーティ王子とは、この国ナンジャワーレ王国の第一王子の名前である。

「留学先から一人の令嬢を連れ帰ってきたのよね。何ていう名前だったかしら? 頭の中にチューリップが咲いていそうな子だったのだけど……」

「リリアン・オーガスタ嬢ですね」

 留学から帰ってきたアーティ王子は、隣国ダルイーナ王国の男爵令嬢リリアン・オーガスタを連れてきた。

「そのリリアンなんちゃらが私のことを悪役令嬢だと抜かしたのよ」

「悪役令嬢……ですか?」

「訳の分からないことを口走っていて、何のことだかさっぱり理解できなかったのだけど……」

 レティシアはかいつまんで昨日の出来事をセバスティアンに話す。
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