私、いつの間に王子殿下の婚約者になったのでしょう? そして、悪役令嬢って何ですか?
『それに絶対服従というのは少々危険ですわ。おとなしい人だって理不尽に抑えこまれたら、いつかは限界がきます。おとなしい人が怒るとそれは怖いんですのよ』

『お、お前!』

『ですから、王子殿下が間違った時には、きちんと間違っていると教えてくださる方が、よろしいのではありませんか?』

 レティシアが言い切った時、「はい、論破!」と令嬢たちはテーブルの下で拍手をしていた。

 しかし、アーティ王子は顔を真っ赤にして叫んだ。

『お前なんか絶対! 僕の婚約者にしてやらないからな!』

『まあ! ありがとうございます!』

『な、なんで礼を言うんだ!? おかしいだろう!?』

『だって王子殿下の婚約者にならずに済むのでしょう?』

 その場で貴族令嬢らしからぬ大笑いをしたのがクロエだ。彼女はすっかりレティシアを気に入って、親友となったわけである。

 そして、お茶会でのアーティ王子の話を娘たちから聞いた貴族の親たちは、「やつだけには娘はやらん!」とばかりにさっさと婚約者を決めるか、聡明だと評判の第二王子コーディに鞍替えしたのである。

 レティシアも婚約者候補から外れてめでたし、めでたし……のはずだった。
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