気になる彼の裏の顔。
◈ ◈ ◈ ◈
2日前。私は放課後、先生に呼ばれて職員室に向かっていた。
雑用だということは分かりきっていたから、進む足取りが重い。
何かと面倒事を押し付けられるのは、私が断るのが苦手だということを知っているからだと思う。
実際、先生の頼みで断れた経験は数少ない。
案の定プリント運びを頼まれた私は、視聴覚室へ歩いていた。
うぅ……お、重いっ………!
自分の非力が嫌になる。
なんとか辿り着いて扉を開け、プリントを置いた時。
―――ガチャンッ
奥から突然物音がして、肩がびくっと揺れる。
な、なにっ………?
「はぁ…………」
耳を澄ますと小さく溜め息が聞こえて、人がいるんだと察した。
「だるすぎ。何でこんなのやんなきゃいけねぇんだよ」
この声、聞いたことある気がする。
低めで胸に響くような低音ボイス。
でも、私が知っているこの声の主は口調が丁寧だし、こんなこと言わない。
ふと人影が動き、窓から差し込む光によってハッキリ顔が露わになった。
「っ……!」
声が漏れそうになり、慌てて口を塞ぐ。
一ノ瀬、零くんだ………。
私でも知っている、とっても有名な人。
国宝級のイケメンで、綺麗な銀髪と水色の瞳が特徴的で。
文武両道で誰にでも笑顔で優しいから、王子様って呼ばれているんだ。
教室でも、話しかけられたらいつも笑顔で対応しているのを見ている。
私が実は…………ちょっと気になっている人。
それにしてもどうして一ノ瀬くんがこんな場所に居るんだろう。
っまって、ということはさっきの言葉は一ノ瀬くんが言ったの………!?
『だるすぎ。何でこんなのやんなきゃいけねぇんだよ』
普段はもっと穏やかなトーンなのに、さっき発せられた声は低い低音だった。
そっと彼を見ると、窓枠にもたれ掛かって髪をかきあげていた。
その仕草さえカッコよくて、一瞬息を呑む。
………でも、明らかに普段と表情が違う。
いつもは笑顔なのに、今は無表情でだるそうな雰囲気を醸し出している。
入り込む風で銀髪がサラリと揺れ、複数のピアスが鈍く光る。
確かに一ノ瀬くんなのに、別人のようなオーラがあった。