ミラーボール
欲望を満たしてくれる物にはどんな手段を使っても喰らい付く、そういう意味らしい。
一ヶ月ほど、練習して何とか聞けるほどになって、瑞希に一番に聞いてもらった。
本家本元である瑞希からすればそれは下手くそ以外の何物でもなかっただろう。
それでも瑞希は黙って聞いてくれていた。
「ひなたの方が、声の通りいいからこういう歌合うかもね」
「私は瑞希が歌ってるほうが好きだけどな」
「ありがと、でもそれひなたの持ち歌にしていいよ」
あたし他の曲あるし。そういって瑞希は『ミラーボール』を私に里子として差し出したのだった。
「あ、ありがとう。…いいの?」
「そんなに指潰してまでしてくれたしね。いいよ、ひなたも今度は自分で歌作れるようになりなよ」
そしたらもっと生きやすくなるかもよ。
瑞希は、そう続けてお別れをするようにジッと『ミラーボール』の楽譜を眺めていた。
私の音楽の道はゆっくりと進みだした。