青い空の下で

再び訪れた沈黙の時間は,
決して居心地の悪いものではなかった。


私は,
「好きになりそうだったから・・・」
という一言を発したせいか,
すこし落ち着いてきた。

すぐそばにある男の横顔を盗み見をした。

端正な顎のラインと
綺麗に筋の通った鼻に,
さっき若い男と
熱烈なkissをしていた唇に,

私は見とれてしまった。


そして,
この唇と自分の唇を重ねてみたい,
そういえば,しばらくkissなんて
していないなと思って,
私はそんなことを考える自分が
おかしくなり,自然と笑いがこぼれてきた。

その笑いを抑えようとすればするほど,止められなくなってしまった。



「どうされましたか?」
男は不思議そうに私を見ていた。


「いいえ,なんでもありません。」
と,笑いを抑えながらようやく言葉をだしたが,私は目から零れ落ちる涙をどうすることもできなかった。



「あなたは,よく笑う人だ。
この前も笑っていた。」
そういうと,
男は涙をながして笑っている私をみて,微笑んだ。

その微笑が
あまりにも素敵すぎて,
私はおもわず視線をそらした。



その無防備な微笑が,
私の心の中に
ストンと音を立てて落ちた。

この男に,きっと私は落ちてしまう・・
そんな不安が
波紋のように
私の心に広がっていった。


「さあ,つきましたよ。
 車はどれですか。」

男は私を地面に立たせて,
身体を支えながら聞いた。
私は止めてある自分の車を指差した。

そこまで男に身体を支えられながら,
どうにか進むと,
車を開けて乗り込もうとする私から,
その男はkeyを取り上げると,
「僕が運転しますから。」と言って,
私を後部座席に座らせると,
モモを乗せ,車を発進させた。

あっという間の
スマートな行動に私は何も言えずに,
それに従った。


何が起こるかなんて人生わからない。

この男と何かが起こっても,
あまり悪い気はしないし,
きっと後悔もしない。

そんな風に思っていた。

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