青い空の下で
「音羽さん,
 ここにいてもらってもいいですか?」

少年が携帯を取り出し,
どこかへ連絡を取ろうとしていた
その手を私は思わず押さえた。

「どうして,
 私の名前を知ってるの?
 それも音羽って呼ぶの?
 音羽って呼ぶのは,
 決まった人だけよ。
 どうしてそれを知っているの?」

私は,
少年の手を離さずに
畳み掛けるように聞いた。

そう,私を音羽とよぶのは真人だけ・・・

「音羽・・・」

背中から,
とても懐かしい声で呼ばれた。

私の目の前にいた少年が,
綺麗な顔をもっと輝かして
そちらの方へ視線を送った。

その表情をみた私は
怖くて振りかえることが出来なかった。

私は運転席に乗り込み,
この場から逃げることしか
考えられなかった。

「音羽・・・」

二度目にそう呼ばれたときには,
私は後ろから抱きしめられていた。

< 31 / 71 >

この作品をシェア

pagetop