【長編】ホタルの住む森
どんなに時が流れても、愛しい人を失い心に空いた穴は簡単には埋まらない。
時間に癒され痛みが僅かに薄らいだだけで、欠けた部分はいつだって空虚で、ふとした時に疼くのだ。
彼女の気持ちが痛いほど解るだけに、晃には陽歌の強さがどこか危うく見えた。
「君は昔を懐かしむ為にこの土地へきたの?
確かに景色は良いけれど、他に観光するところもないし、君のような若い娘さんが有休を使ってまで見にくる所じゃないと思うんだけど」
如月と言う名に記憶は無かったが、彼女が自分を知っている理由を知りたくて、徐々に質問の幅を広げていった。
陽歌が話す度、その仕草が茜に重なる。
それは単に茜に似た瞳を持ち、良く似た仕草をするからだろうか?
それとも、晃の中に浮かんだ一つの可能性を意味しているのだろうか?
『ただいま』というあの言葉は、何を意味するものだったのだろうか?
晃は慎重に言葉を選びながら、陽歌に質問を重ねていった。