【長編】ホタルの住む森
『思い出して欲しかった。あなたに託した私の最後の願いを…』
「ごめんなさい。私…覚えていないの。私に何を託したかったの?」
『私の呼びかけにやっとあなたは応えてくれた。あなたをあの場所に導きたかったの』
「…それは晃先生に会う事? それとも私が先生を好きになること?」
嫌味な物言いをした自分にチクリと心が痛んだ。
『晃と暁に私が託したメッセージを伝えて』
「茜さんは私が先生を好きになるって知っていたんですか?」
『彼はきっとあなたに惹かれるわ』
「違います。晃先生は私の中の茜さんを求めてるんです。
もしも彼が私を好きになっても、それは私への想いじゃない」
心が黒い闇に覆われていく…
酷いことを言ってしまったと思っても、暴走した感情を止めることは出来なかった。
『陽歌ちゃん。私の最後の願いを叶えて。お願い…』
「茜さんはずるい! 私の心をかき乱さないで。私の心を滅茶苦茶にしないで」
茜の頬を涙が一筋流れた
『ごめんなさい……陽歌ちゃん』
世界が光に包まれた。
何も見えなくなった。