奴のとなり



おじさんは茶色い髪を後ろに流していて、
白いシャツに黒いパンツが
とてもよく似合っている。



おじさんはあたしたちに気づくと、
グラスを磨く手を止めた。



「よぉ、一樹。ここはサボり場じゃねぇよ」


落ち着いた優しい声。



人を警戒させない声。



あたしは不覚にも
おじさんの声で簡単に気を許していた。



奴は振り返り、あたしを見下ろす。



「危ねぇ場所じゃ・・・、その顔やめろ」



「へっ?」



今回は珍しく奴の言ってることが分かる。



でも無理だよ。



だって、ここ面白いもん。










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