奴のとなり
目の前にあるソレは、とても貴重なもの。
真っ赤な一樹桃矢。
どのへんでそうなったのか分からないけど、
林檎みたい。
「一樹桃矢?」
声を掛けると、
びくりと体が跳ねて、顔を逸らされた。
なんか・・・、可愛い。
もっと見たくて、
あたしは奴の前へ回り込む。
奴はそんなあたしを避けたくて
首をぶんぶんと動かす。
イタチゴッコ。
「桜ちゃん、一樹が撫でてくれるなら?」
「一生一緒にいる!!」
「ぎゃはは!!」
ナナミさんに言われて、勢いで答えたけど、
そのおかげで奴が林檎に、
熟していってる理由がわかってしまった。
だからナナミさんが好き。