奴のとなり



ふいに、奴の手が止まり、
あたしは人間に戻る。







見上げると、奴の目があたしを捕らえていて、その目に篭る熱にあたしは動けなくなる。



それから、あたしに影を落として、口を啄ばむ。



それから深いキス。



あたしは溺れる。



深い水底に沈んでいくように。



溺れる。



あたしはこのまま、このまま一樹桃矢と繋がりたいって強く願ってた。



女なのにとか思われても、そう心が強く願うことを止められない。



溺れながらも、奴の背中にしがみつき、あたしも応えようと必死になる。










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