奴のとなり



それからは魔法を見てるみたいだった。



優雅に素早く動きながら、あたしの髪だとか、顔だとかが変化する。



長い茶色の髪はクルクルと巻かれ、お化粧もナチュラルなのに引き立てえるところは引き立てられてて目が大きい。



爪も綺麗な桜色。



1時間ぐらいで彼の動きは止まる。



「はいっ完成―っ。あたしって天才よねー」



満足げな声で、恍惚とした表情。



きっとあたしの出来を褒めるんじゃなくて、自分の腕に酔ってる感じ。



そう言っても厭味にならないぐらい、鏡の中のあたしはいつもと違ってた。



しかも、お化粧してますって感じじゃなくて、いつもと違うのは確かなんだけど、ごく自然にされてるから、うわってならない。










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