奴のとなり
「どうした」
「うん。居ないから気になって」
「そうか」
「うん」
奴に近寄って、隣に立つ。
ふわり
あたしを包むように暖かいコートが振ってきた。
「なんつー格好してんだよ」
「だって」
「初日からこれじゃ、先が思いやられるな」
「だって・・・」
奴の目は細くなってて、優しい。
あたしの好きな目だ。
奴があたしに掛けたコートのポケットを探る。
不思議に思ってると、手に持った携帯が震える。