奴のとなり



「かずちゃん…やるわね」



さすがに負けたわ



なんてライバルに送られるような言葉をぽつりと吐き出し、皐月さんはほおっとため息をついた



「桃矢くん」



「何だよ」



「メニューはちゃんと口で伝えなきゃなんだよ」



「伝わりゃなんでもいいだろ」



「ダメなの!」



「桜が聞きたかっただけだろ」



「………」



ダメだ



いつもは負けないのに、今日は桃矢くんに勝てる気がしない



「もう、いいもん」



拗ねたように水を荒く手に取り、ぐいっと飲み干した



楽しそうに横でにこにこしてた皐月さんは眉毛をハの字にすると、



「しようがない子たちねぇ、こんな日ぐらい仲良くしときなさいよ」



と呆れたように髪をくるくるといじる



こんな日だろうと無理なんだもん



なんか、いつも以上につんつんしちゃうだもん



ふてくされた気持ちが表に出てたのか、皐月さんに頭を撫でられる












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