林檎と、キスと。
「泣くなよ…」
困り果てた声でそう言った彼が腰を浮かす。
わたしはとっさに、
「ちょっ…。まっ…ま、待って…っ」
左手をピンッと前に突き出し、ストップのポーズをとった。
「…え?」
腰を浮かせたままの彼。
ストップしたまま顔を赤らめるわたし。
「……」
「あ。…えっと、その……」
“抱きしめられる”
“キスされる”
そう思ってしまったわたしは、反射的に左手を突き出していたのだった。
「う…。な、なんでもないっ」
左手を引っ込めた代わりに、右手に握っていたフォークをりんごに突き刺す。
勝手な妄想をしてしまったことよりも、自分が、
“心のどこかでは、そうなることを望んでいる”
ことを知り、恥ずかしくなったのだ。