林檎と、キスと。
「…べつに。寂しくなんかないもん」
強がりを言うと、彼は肩をすくめ、
「そりゃ、失礼」
と、持ってきたビニール袋の中身をあさりだした。
「まだ、りんごあるし。温めるだけのお粥とか、適当に買ってきたから。しっかり食べて、おとなしく寝てろ。な?」
そのあとに続く言葉を、
“じゃあ、オレ、そろそろ帰るわ”
なんて言葉を想像してしまって。とっさに、
「じっ、自分だって…」
と、口を開いた。
ビニール袋に手をかけたまま視線をこちらに移した彼。
「……オレ?」
ちょっぴり首をかしげ、わたしを見つめる。
「そっ…、そう。自分だってどうせ、一緒に過ごしてくれる彼女、いないじゃんっ。そっちこそ、寂しいヤツだよ」