林檎と、キスと。


一瞬、目を丸くした彼は頬杖をついたまま。

「残念でした。まだ彼女ではないけど、一緒に過ごしてくれる女の子はいるんです。だから、寂しくないんです」

そう言うと、ニッと白い歯を見せて笑った。


「……え?」


さっきまでのドキドキとは違う、心臓の動き。


“好き”

“大好き”

どんどんと加速していった彼への想い。


それなのに。


彼の言葉で突然、目の前が真っ暗になって、わたしは慌てて急ブレーキをかけた。


グッと握りつぶされてしまった想いが、痛い。


「……だったら、こんなとこ、…いたらダメじゃん…」

彼がむいてくれたりんごの甘さが口の中にまだ残っていて、なんだか泣いてしまいそうだ。

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